1. 最長5年の据置期間が明け、本格化する元本返済
コロナと言えば、令和2年(2020年)に早々に始まり、感染された方はもちろんのこと、日本と世界の社会・経済に深刻な影響を与えていたものでした。令和5年(2023年)5月に感染法上、「5類」に移行したことで一応の収束をみた、と言われますが、その余波は、まだ私たちの現場、地域の企業・事業者様の経営にも、残っているのです。
当時コロナの蔓延により、突然の経営不振に陥った企業を救済するため、コロナゼロゼロ融資が設けられました。令和2(2020)年~令和3(2021)年のことです。これにより、多くの企業様がごく簡単な手続きで、大きな負担もなく借入を受けることができ、救済されました。
しかし、その5年(最長)の据置期間がついに終わってしまい、いよいよ経営、資金繰りに大きな負担となる「元本返済の本格化」が、まさに今、目の前で始まっているのです。
「売上自体はコロナ前の水準に少しずつ戻ってきた。」
「なんとか会社・お店を存続させ、客足を戻せてきた。インバウンドのお客様もずいぶん増えたしな」
そう胸をなでおろしたのも束の間、毎月口座から引き落とされる返済額を見て、えッと目を丸くする経営者様が後を絶ちません。なぜ、売上が戻りつつあるのに、これほどまでに手元にお金(キャッシュ)が残らないのでしょうか。
2. 2〜3年前と決定的に違う「利益率悪化」「元本返済」というダブルパンチ
数年前と現在で決定的に異なるのは、「世界的な物価高・資材高騰・エネルギー価格の上昇」、そして「最低賃金引き上げに伴う人件費の高騰」です。
売上がコロナ前と同じ1,000万円に戻っていたとしても、仕入れ値や光熱費、人件費が1.2倍〜1.5倍に膨らんでいれば、手元に残るお金、イコール「粗利益(売上総利益、会社や事業によっては限界利益・貢献利益)」は大幅に削られてしまいます。
つまり現在の経営環境は、「コスト高で削られた少ない利益の中から、過去最大の元本返済を捻出しなければならない」という厳しいダブルパンチの構造になっているのです。
過去の利益率を、過去の事業構造の前提で立てた返済スケジュールが、現在の試算表とズレてしまうのは当然のことと言えます。
3. 【実務の現場として】単なる追加融資の打診では、銀行は動かない
資金繰りが厳しくなった際、多くの社長様がまず思い浮かべるのが「銀行や信金への追加融資の相談」です。
しかし、過去の決算書(結果の数字)だけを手に持っていき、「なんとか追加で貸してほしい」「据置を伸ばしてほしい」と口頭で頼んでも、金融機関のハードルは極めて高いのが実情です。
金融機関が見ているのは、過去の反省ではなく「これから向こう1年間、具体的にどうやってキャッシュを回し、返済していくのか」という未来の実効性、つまり言えば、この経営者の将来の返済能力だからです。
【当事務所の現場から】
私たち行政書士エーワイユーグローバルオフィスでは、単なる帳簿作成や書類作成にとどまらず、実際に「民間金融機関7行 + 日本政策金融公庫」が参加するバンクミーティング(金融機関交渉)において、5か年の経営改善計画書を策定・承認させ、現在も6ヶ月ごとのモニタリングを伴走しながらクライアント企業様の事業を守り抜いている実績があります。
現場で数々の銀行交渉を行って痛感するのは、「根拠ある資金繰り表と、お客様の将来の利益を革新させる計画書があるか否かで、金融機関の態度は180度変わる」という事実です。
4. まとめ:一人で悩まず「未来の資金繰り」の見える化から
コロナ融資の返済本格化は、決して貴社一社だけの問題ではありません。
地元の真面目な経営者様ほど「なんとか自分で返さなければ」と一人で抱え込み、手元のお金がなくなってゆくことに悶々とし、限界まで相談を遅らせてしまいがちです。
しかし、適切なタイミングで「正しい財務資料(資金繰り表)」を準備すれば、追加融資、借換え、または条件変更(リスケ)など、会社を守るための選択肢は必ず残されています。
次回(その2)では、銀行が間違いなく支援的になる「銀行が本当に納得する資金繰り表の3つのポイント」について具体的に解説いたします。
