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日本の技、日本の品質、日本の味わいを掲げ、グローバル市場に挑戦している企業様を訪ねています。
世界が追い越していったのか、はたまた日本が衰退したのかわかりませんが、昨今、経済・社会・生活の豊かさなど様々な分野で、世界における日本の地位低下が言われています。しかし本当にそうでしょうか?
日本には世界に誇れる技術や伝統、文化があって、多くの企業様の努力によりその価値が各国で認められています。さらに、そうした既存プレーヤーに加えて、新たに自社の商品・技術の世界への発信にチャレンジしている企業様もあるのです。
このシリーズでそのような企業様が、いかにグローバル市場に挑戦されているのか、皆様に紹介したいと思います。
新シリーズとして、
九州佐賀の
皆様の活動、
特に
海外市場に向けた
取り組みを
ご紹介します。
今回ご紹介するのは、
光武酒造場様です。
(https://www.kinpa.jp)
佐賀でも最も古く、江戸の元禄年間から酒造を営んでいた光武酒造場様、今から25年ほど前に、あるものを手に入れます。それは、焼酎の製造技術です。
そう、光武酒造様はそのころ、佐賀・武雄市にある焼酎メーカーに資本を入れ、焼酎の製造設備を取得、乙類焼酎の製造に乗り出したのでした。
当初は麦焼酎でしたが、元のメーカーの製造技術に
光武酒造場様のオリジナルの研究成果も加え、
商品をレベルアップしてゆきました。
そして、麦から、独自の香りが引き立つ
黒麹を使った芋焼酎の製造に着手、
販売前に酒販店様から銘柄名を公募、
結果ついた名前が、
「魔界への誘い」
です。
その発売開始後、ほどなく訪れたのが
空前の焼酎ブーム。
売り出したばかりの「魔界への誘い」の売上も
大きく伸び、
光武酒造場様も全国トップ40の酒蔵に
ランクインするほどまでなりました。
そうした「魔界への誘い」を全国区の焼酎にまで押し上げたのが、アニメとのコラボレーションの企画です。
もともと光武酒造場様は
永井豪先生の知己を得られていたこともあり
「デビルマン」とのコラボをはじめ、
その後皆さんもご存じと思いますが、
「北斗の拳」のシリーズ化を敢行。
「酒造界での平成最後の大ヒット」
と言われる程のブームになりました。
現在では、光武酒造場様の「魔界への誘い」は激戦区の焼酎業界の中でも確固たる地位を占めるようになりました。
そんな光武酒造場様の海外展開ですが、輸出をスタートさせたのは2005年のこと、
当時は卸販売店の言いなりであったということで、目立った実績を挙げることができませんでした。
その状態で光武晋弘様が10年前に光武酒造店に戻られ、前に書いたように精力的に動きまわり、輸出にテコ入れをされた結果、
コロナ前の2019年には、タイ、オーストラリア、中国、香港など、世界で17の国と地域と取引をするところまで伸ばすことができました。
光武醸造様の輸出は上記のように本格化したのはここ10年ほど。
日本酒業界としては明らかに後発になります。普通のやり方ではまず入ってゆけません。
そこで光武酒造場様では、市場へのとっかかりとして、自らの得意分野、黒麹の芋焼酎「魔界への誘い」に思い切って絞りました。
そして市場はアジア、しかも現地に在留する日本人をターゲットに、日系企業が多く、日本人駐在員の社宅のある地域にまず集中しました。
実は芋焼酎というのは、今や日本では代表的な蒸留酒ですが、海外で地位を得るのはなかなか難しいのです。
海外でももちろん蒸留酒を飲む習慣は多くあります。
代表的なものはイタリアのグラッパ、ドイツのシュナップス、北欧のアクアビット、中国の白酒(バイチュウ)など。皆度数が45度~60度のスピリッツで、皆さん、これをストレートで楽しまれます。
一方焼酎ですが、度数はだいたい25度と、これらのスピリッツに比べるとかなり薄く感じます。
ですので、これらスピリッツをストレートで楽しんでいる国々の人から見ると、どうしても物足りなく感じます。
その割には芋の香りがしっかりし、そのあたりがあまりバランスよく捉えられない、ということがあるようです
(実は芋焼酎でも蒸留の出来上がりは50度前後あるのですが、リキュールである焼酎を名乗るためには45度未満にする必要があり、これを水で希釈しているのです)。
とはいえ、とっかかりはさておき、本格的に海外市場で展開するためには、やはり現地の方々にも浸透させなければなりません。
そこで光武酒造場様では、現地の方々への販売のため、アジア圏ではソーダ割をすすめていて、これが中国などで浸透してゆきました。
そしてアジア圏は日本のサブカルチャーに非常に感度の市場です。
光武酒造場様では、
通常の販売チャンネルは一国一地域一社が原則、
何社か分ける場合はアイテムでルート分けをしているのですが、
「北斗の拳」シリーズなど、
アニメコラボ品は売りたい販売店には
基本的に売って頂く、非独占政策をとっています。
打ち上げ花火にたとえられていましたが、決して長くヒットが続くわけではないものの、
短期的にはそれなりにインパクトのある売上があり、輸出では焼酎が売上の80%を占めるまでになりました。
一方このようにアジア市場を固めた後、いよいよ欧米市場に本格的に参入、
2018年~2019年くらいから実績が出始めました。
ここでは、まず現地の市場に浸透させなければいけないこともあり、
市場の入口では焼酎でなく、日本酒をメインに置きました。
ここの市場はワインを飲む文化であるので、
食中酒として、という進め方は、光武晋弘様にはすっきりくるものではありませんでした。
進め方として、バーや、レストランでしたら食前酒としてすすめ、リンゴ系・オレンジ系などのカクテルベースで進める場合が多いです。
ここでは日本酒だけではなく、焼酎も入ってゆきますが、
アジア圏のようなソーダ割ではなく、
ここではお湯割りですすめています。
このようにアジア、ヨーロッパで市場を創り上げた光武酒造様が、
実際に海外市場にどのように対応されているのか。
次回完結編ではそこを掘り下げてゆきます。
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