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日本の技、日本の品質、日本の味わいを掲げ、グローバル市場に挑戦している企業様を訪ねています。

世界が追い越していったのか、はたまた日本が衰退したのかわかりませんが、昨今、経済・社会・生活の豊かさなど様々な分野で、世界における日本の地位低下が言われています。しかし本当にそうでしょうか?

日本には世界に誇れる技術や伝統、文化があって、多くの企業様の努力によりその価値が各国で認められています。さらに、そうした既存プレーヤーに加えて、新たに自社の商品・技術の世界への発信にチャレンジしている企業様もあるのです。

このシリーズでそのような企業様が、いかにグローバル市場に挑戦されているのか、皆様に紹介したいと思います

第1弾は、東京の酒蔵である

石川酒造株式会社様です。

(https://www.tamajiman.co.jp/)

石川酒造様は、東京多摩地区の福生市、多摩川の河岸段丘の上に酒蔵を構えており、幕末文久年間から酒造りに取り組んでいます。日本酒に加え、クラフトビールも品揃えをし、東南アジアへの輸出拡大に取り組んでいます。
その取組みはまさに異端児、
日本酒市場の主流とは一線を画すものでした。
そのブランド
「多満自慢」(日本酒)「多摩の恵」(クラフトビール)を引っ提げて、
海外市場に挑戦です!

その1へ→

その3へ→

 その1では、酒蔵のアイデンティティとして、主流の味の真逆を行くお酒造りを
ご紹介しました。

 今回のその2は、そのマーケティング、ブランディングについてです。

お客様がいらっしゃる酒蔵

 前回お伝えした、市場のメインストリームから見れば異端児のようなお酒を擁し、営業、企画の責任者である小池さんがすすめている取り組みが、
「お客様が来いらっしゃる酒蔵」、
「直営店をスタートとする販売戦略」です。

 ここでは、日本酒やビールの販売拡大、
「多満自慢」、「多摩の恵」のブランディングをどのようにすすめているのでしょうか。

 石川酒造様はその敷地全体を「酒飲みのテーマパーク」として、標榜されています。

 敷地内には市の重要文化財となる建物が6つある他、直営の飲食店「福生のビール小屋」「割烹いしかわ」また直売店「酒世羅」を設営されています。

 そもそもなぜ敷地内に飲食店や販売店を始めたのか?きっかけは内輪の集まりで使っていた酒造敷地内のスペースを、ビールの免許の基準である醸造量60㎘をクリアするための対策として直営飲食店にしたことでした。

レストラン「福生のビール小屋」。オーストリア、ウィーン郊外地元の居酒屋、ホイリゲの雰囲気があります。

 その当時、酒屋さんを最終小売店とする既存の流通網のなかでは、このようなことは必ずしも歓迎されるものではありませんでした。しかし小売店さんが減少し、近隣に廃業等で酒屋さんがなくなった今となっては、店を持っていてよかったと言えるのです。 

和食レストラン、「いし川」。

 小池さんはこれら敷地内直営店を核として、さらにオンラインで商品を販売するという、酒造会社が直接BtoCを行う販売戦略をとっていますが、これが非常に有効であったと言えます。

 石川酒造様の地域市場である東京は全国区で、各地の酒造メーカーのお酒のひしめくところ。とても競争が激しいのです。例えば新宿等のデパートに出品する場合、もちろん量はさばけるのですが、営業的に頑張ってもせいぜい1品目を店頭に置いて頂ければよいところで、売り上げが上がらなければすぐに更新(撤去され、売り場のスペースを他の酒に置き換えられること)されてしまします。

 そこで考えたのが、飲食店や直売店で地元のお客様に対応し、また「酒飲みのテーマパーク」として酒蔵自身を観光スポット化し、地元外のお客様に対応することです。

 「酒飲みのテーマパーク」の訪れるお客様は、飲食店で石川酒造様のお酒を楽しみ、それらお客様に直売店でお酒を買って頂く、味を覚えて頂く、気に入って頂く。そういったことと並行してSNSも活用して企画を仕掛け、直売店のリピートや企画のフォローもオンライン販売で対応するという、BtoCの流れを作っています。

直営店「酒世羅」の店内

 これは売上効果に加え、市場へのアンテナの役割も担っています。お客様への直接の販売を手掛けるおかげで、市場の状況も直接把握することができるようになり、企画も酒蔵としてイニシアティブをとって発信できるようになりました。

 通常酒蔵の企画といえば、卸の販売店さんなど、商流側から提案されて行うというものが多いのですが、石川酒造様は、このBtoCの流れのおかげで、ある程度何をやれば当たるかというのが把握できるようになりました。そこで、酒蔵側から自信をもって提案できるのです。

 最近の例では、2022年2月22日「にゃんこの日」に合わせて「にゃんこ」のラベルものを販売したが、当初予定の100本は完売、ラベル増刷に追われました。

 (「にゃんこ」ラベルは今年も企画されますので、皆様お楽しみに。さらに今年は桜にちなんだピンクのボトルもやります。詳しくは右記のURLを: https://tamajiman.com/)

 コロナ下で出荷量がどうなったかということは酒造酒販業界では大変気になるところですが、石川酒造様では、このBtoCの流れを作ったことで、家呑み需要をしっかり捉えることができました。

 2020年、石川酒造様のビールの出荷量は業務用(レストラン向け等)が主体であったことから対前年50%に落ち込みました。日本酒出荷量も全体では対前年を下回ったものの、家呑み需要をしっかりと捉えたお店は対前年出荷量、ここ数年の出荷量の推移を見ても、市場縮小がとまらないなかで横ばい維持と健闘しています。

 もちろん卸店様から量販点様という既存のBtoB的な流れも石川酒造様は大事にされていますが、市場のアンテナを兼ねた、しかしアンテナに留まらない規模のBtoCを手掛けることで販売の好循環が起きているのは間違いありません。

異端児が取り組む

ブランディングとは?

 さて、そんなお酒造りでも、販売でも既定路線とは一線を画し、独自の路線をゆく石川酒造様。その取り組むブランディングも型破りなものでした。

麴室。分かる人が見れば酒造りがわかってしまうところで、
通常酒蔵さんは外部には見せないところです。

 

 石川酒造様がまずもって大切にされているのは、積極的な開示、露出を行って、その独自の味の路線をお客様、ひいては市場に認知していただくこと。

 
 そのことは「酒飲みのテーマパーク」の企画の一つである酒蔵ツアーに凝縮されています。たとえば通常酒蔵であれば企業秘密とする麴室を敢えて見せ、写真も撮っていただく。

 さらにそんなブランディングに一役買っているのが、杜氏の前迫さんの喋り勝つプレゼン。

 前迫さんは、まあよく喋る方で、酒蔵ツアーでも喋り倒す状態です。杜氏が喋り、酒蔵の様々なところをお見せし、写真を撮って頂く。こうすることで、「多満自慢」の味と強く関連性を印象付けて頂くわけです。

 そして、SNSも大切なブランディング、石川酒造様の認知のためのツール。それぞれ機能により使い分けています。

Facebookは公式HPの次に重要な情報を載せ、広告や告知を行うツール。

TwitterはTwitter担当と前迫氏が関連性のないテーマも含めて出し、からめ手から誘導するもの。

Instagramは自社というより、お客様のコンテンツにいいね!を入れたり、後フォローを公式アカウントで行うもの。

LINEは告知―クーポン、オンライン感謝デーでの活用

   

という具合に使い分けています。

 今後の課題はYoutubeです。今年は仕込みが一段落したら「前迫の杜氏Chanel」が登場するかも?

 さて、次回はいよいよ完結編!

 石川酒造様は
マネージメントもユニークです。

 そして
お待たせ!
海外進出の
話です。
石川酒造様の歴史もご紹介します。

続きをどうぞ!

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By AYUGO01

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