All rights are reserved under the copyright of Yasuyuki Ayukawa (2023)

ブログトップへ

日本の技、日本の品質、日本の味わいを掲げ、グローバル市場に挑戦している企業様を訪ねています。

世界が追い越していったのか、はたまた日本が衰退したのかわかりませんが、昨今、経済・社会・生活の豊かさなど様々な分野で、世界における日本の地位低下が言われています。しかし本当にそうでしょうか?

日本には世界に誇れる技術や伝統、文化があって、多くの企業様の努力によりその価値が各国で認められています。さらに、そうした既存プレーヤーに加えて、新たに自社の商品・技術の世界への発信にチャレンジしている企業様もあるのです。

このシリーズでそのような企業様が、いかにグローバル市場に挑戦されているのか、皆様に紹介したいと思います

新シリーズとして、

九州佐賀の

皆様の活動、

特に

海外市場に向けた

取り組みを

ご紹介します。

今回ご紹介するのは

矢野酒造様です。

(https://yanoshuzou.jp)

ものづくり
酒づくりへの
想い

今回お話を伺った矢野酒造様の現当主、矢野元英様は杜氏でもいらっしゃいます。経営者としての当主、株式会社である矢野酒造様では代表取締役ですが、そのご当主が杜氏を兼ねられるのは先代からのことです。

その先代はお父様、このように代々家業を世襲された家にお生まれだった元英様は、そのままストレートに家業を継がれたわけではない、という方です。

大学は横浜の国立大学でいらっしゃり、入学当時は家業を継がず、海外展開などのできる商社などへの就職を考えられておられました。

しかしいろいろとストーリーがあり、大学卒業後の就職先は事務方ながら、大学の近くの美術館でした。

クリエーションの結果であるアートに囲まれた美術館勤務のなかで、元英様は何かものを造ってゆく、ということに思いを向けられ、そこで家業を継がれることを決心されたのでした。そのようなこともあり、ものづくり、としてのお酒づくりにも大変強い思いをお持ちです。

酒蔵の敷地内を流れる川、
夏には時折ホタルが見られます。

社長として、杜氏として、酒の設計から醸造に至る製造を担われていることに楽しみを感じておられます。

矢野酒造様の酒造りの設計とはどのようなものでしょうか?

お酒の設計の基軸として、前に行ったような、鹿島では珍しいきりりとした味わいの酒、そこはあるのですが、やはり市場の好みは毎年微妙に変わります。

またお米の出来も毎年変わり、それにより発酵、醸造も毎年変わってきます。

分かりやすくいうと、蒸しても硬いお米ですと発酵してもお米の発酵による味はひきだしにくく、あっさりしたものになりがち、また柔らかいお米は発酵が進みやすく、味が出すぎて濃淳な味になりがち、という傾向があります。

その硬い、柔らかいというお米の仕上がりは、年によるお米の出来上がりに影響されるのです。

そこで酵母の種類を代えたり、発酵の仕方を代えたりということを出発点であるお米と、到達点としてその年の目指すべき味を繋ぐような順行、逆行を繰り返しながら設計をしてゆく、というのが毎年の矢野酒造様の、杜氏として矢野元英様の酒造りになります。

酒づくりの
サステーナビリティに賭けて

もうひとつ、矢野酒造様が取り組んでおられるが、酒米でなく、食用米、それも佐賀鹿島の原風景ともいえる棚田で栽培した食用米での食用米を利用した「竹の園 ごえん」です。

これは鹿島市ラムサール条約推進室、またご近所の酒蔵もう一蔵とコラボレーションをして制作された企画ものです。

お酒、棚田、ラムサール条約と一見繋がってゆかないテーマのように見えます。どうしてこうした企画が成立するのでしょうか?

お酒を造るのには通常酒米を使います。大粒のお米で炭水化物の豊富な芯の部分が大きい。その分磨いたときに炭水化物の純度が高くなり、すっきりした、雑味の少ないお酒が造りやすいという特徴があります。山田錦などが典型ですね。

しかしその分、お米の栽培の難易度は高くなります。特に古くからある酒米は背が高く、粒と重量が大きいため作りにくい。また強風で倒れやすく台風などでも倒れやすいものです。

最近の地球温暖化によるものか、九州は毎年大型台風にヒットされるようになりました。

台風シーズンはちょうど稲作では穂が出て実が大きくなってゆく時期に当たります。九州での稲作離れが懸念されます。

特に酒米、また耕作により大きな労働力の求められる棚田はなおさらです。

棚田は土砂災害に対して天然の緩衝作用があると言われ、干潟を守るうえで大切な役割があると考えられています。有明海の干潟は2015年に湿地として、ラムサール条約に登録されました。

この湿地としての干潟を保護するため、鹿島市が行政として活動しています。棚田での稲作を継続するため、棚田で作った食用米を使って酒造りをする。

矢野酒造様としても、今後酒造りを継続するためには、酒米のみに依存せず、食用米によるお酒の銘柄をもってゆくことが重要です。

現に昨年、米が不作のため酒米がタイトになり、特に純米吟醸など特定銘柄を造るために必要な三等米以上のグレードが品薄になり、純米酒への特化をすすめておられる矢野酒造様でもお米の調達に大変苦労された、ということです。

酒づくり、稲作・棚田、有明海の干潟、それぞれの持続可能性、サステーナビリティがこのようなわけに繋がってくるのです。

前にも申しましたようにご当主の矢野元英様は干潟のうえの運動会、鹿島ガタリンピックの運営事務にも携わっておられます。

市外、県外からの参加も多いこの大会は、干潟を盛り上げ、干潟を知って頂くことで注の保護に皆様に目を向かせて頂くためのものでもあります。

競技に参加しない事務運営でも、干潮の間6時間以上干潟から出られず、結構きついと矢野元英様はおっしゃられておりましたが、これもご先祖と同じ地域貢献の意味もあるでしょう。

本年はコロナ後の再開ということで6月4日に行われます。

(https://gatalympic.com)

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: -1024x485.jpg

やはり日本国内のお酒の需要は確実に落ちています。前に言ったようにかつて鹿島市に20あった酒蔵も、現在では矢野酒造様を含め5まで数が減ってしまいました。

酒づくりの
サステーナビリティを賭けて
輸出に活路を見出してゆく、
酒蔵としての

矢野酒造様のありかたは、
九州のお酒としては
異彩を放つ味わいとともに、
注目して
ゆきたいですね。

ブログトップへ

All rights are reserved under the copyright of Yasuyuki Ayukawa (2023)

By AYUGO01

コメントを残す

テキストのコピーはできません。