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日本の技、日本の品質、日本の味わいを掲げ、グローバル市場に挑戦している企業様を訪ねています。世界が追い越していったのか、はたまた日本が衰退したのかわかりませんが、昨今、経済・社会・生活の豊かさなど様々な分野で、世界における日本の地位低下が言われています。しかし本当にそうでしょうか?日本には世界に誇れる技術や伝統、文化があって、多くの企業様の努力によりその価値が各国で認められています。さらに、そうした既存プレーヤーに加えて、新たに自社の商品・技術の世界への発信にチャレンジしている企業様もあるのです。このシリーズでそのような企業様が、如何にグローバル市場に挑戦されているのか、皆様に紹介したいと思います。
第2弾は
山梨・富士山の麓
河口湖畔の酒蔵
井出醸造店様の
取り組みを
ご紹介します
井出醸造店様は富士山北麓の酒蔵で、お酒造りは幕末期からですが、富士山麓地域でさらに長い歴史を歩んでこられた旧家です。その長い歴史・伝統の結晶の一つとして、日本酒を海外に問われている。そのようにお見受けしました。「より多く」ではなく、「より深く」。井出酒造様の発信する、日本の伝統文化の一つとしての日本酒、ご紹介します。
前回は、規模を追わず、伝統へのこだわりを貫く井出醸造店様が、如何に海外のお客様にそのお酒を認知して頂くか、そのトリガーとしての酒蔵ツアーを中心にご紹介しました。最終回の今回、海外に向けた銘柄、そして実際の酒造りのこだわりをご紹介します。
前回、個人ベースの積み重ねでブランド力を上げてゆくための入り口として、井出醸造店様は酒蔵ツアーを大変重要視されていることをご紹介しました。一方で井出醸造店様は個人ベースでない部分で知名度を上げてゆく手段も考えていて、その点でコンテストには毎年出品し、露出を増やすことも考えています。
G.I. Yamanashi
さて、ご紹介した海外に対する取り組みのなかで、どのようなお酒を「伝統の結晶」として推されているのでしょうか?
もちろん、厳冬の富士北麓ならではのきりりと引き締まった味わい、令和4年の東京国税局清酒鑑評会の純米吟醸部門で優等賞を獲得した「純米大吟醸 冨麓」もシンガポールなど、海外市場でお酒好きの方々の間でファンが増えてきて-いるところですが、ここで井出醸造店様がもうひとつこだわっているのが、山梨県の原産地認定、G.I Yamanashiです。
フランスのアペラシオン・ドリジン・コントローレに代表されるワインの原産地認定は、そのブランドの重要な要素として、生産者が守るもののみならず、お客様もこだわを持たれるところです。このような海外市場に向かって、山梨の原産として発信してゆきたい。そうすることで、ワイン文化に馴染んだ方々にも、これらを日本酒としてより共感をもって馴染んで頂けるものと思っています。
G.I.Yamanashiとして海外に展開しているのが、「甲斐の開運 純米吟醸北麓スパークリング」。 5年ほど前から商品化している、二次発酵による発砲日本酒です。
世界各国の酒類の市場で必ずあるのがビールやシャンパン、スパークリングワインなどの発泡酒です。発砲は醸造本来のものですからどの市場でもあるものです。
食中酒、食事とともに楽しむお酒としての日本酒を考えると、本来はスティル(発砲のないもの)で楽しんで頂きたいのですが、日本酒に馴染みのなかったお客様がそこにゆくまでの、まず足がかりとして手に取っていただきたいというもので、発砲の日本酒を用意されました。
海外市場、特に輸出の場合はどうしても単価が高くなってしまうこともあり、海外市場では主に富裕層の方々に、井出醸造店様のお酒をお楽しみ頂ける機会がより多いと考えられます。ですので、海外市場用のお酒は安物でなく、コンセプトをしっかりしたものにしなければなりません。その点でこの北麓スパークリングは、井出醸造店のお酒の特徴である、きれいな軟水である富士山の伏流水と冬の厳寒の気候を活かしたきれいな、香り高い酒質になっています。
もう一つは「甲斐の開運 アッサンブラージュ」です。井出醸造店様のお酒をお楽しみ頂く機会の多い富裕層の方々は、どの国でも皆様ワイン文化を楽しんでおられます。ワインに代わるものとして、アッサンブラージュ、ブレンドものの日本酒に挑戦し、これによって複雑な味わいを得ることに成功しました。
酒造りでの
こだわり
では、そうした「伝統の結晶」としてのお酒造り、井出醸造店様はどこにこだわっているのでしょうか。
井出醸造店様で酒造りの軸としているのは、「水」と「厳冬」です。
井出醸造店の日本酒は、全量富士山の伏流水で仕込んでいます。やはり世界遺産、世界への知名度として、また日本の方々に対してもいいお水のイメージを持って頂きやすいものです。
何より、井出醸造店で使用する富士山の伏流水は非常に軟質で、雑味を極限まで減らした。きれいで香り高いお酒を造りやすい特徴もあります。
そして、「厳冬」。井出醸造店様が酒造りをする富士北麓では、醸造期間である冬は寒さが厳しいのです。そのため、発酵も低温によりゆっくり進みやすく、華やかな香りを作りやすいところがあります。
この富士山の軟らかい伏流水と、厳冬という気候を天恵のものとして軸とし、その恵みを最大限引き出すためにきれいで香り高い酒質にこだわっています。その酒質を基本として、銘柄ごとのの味わいに様々な変化を持たせるため、米・酵母・麴・発酵プロセスをパラメーターとして、バリエーションを付け、組み合わせてゆく、という設計思想で酒造りをすすめています。
WEB酒蔵ツアー!
第1回でも紹介しましたように、井出醸造店様は、「温故知新」をモットーに、伝統的な作り方に近代化したプロセスをミックスした酒造りをされています。人の手を掛けるべきところは伝統的手法にこだわり、そこにこだわらなくともよいところは機械を使って効率化を図っています。それを実地でご紹介しているのが酒蔵ツアーです。ここでそのような酒蔵ツアーから、WEB上でエッセンスをご紹介します!
まず、酒米の蒸し窯
これは醸造タンクです。先程ご紹介したように、きれいで香り高い酒質にこだわる井出醸造店様では、寝かしすぎて酢酸成分が増えないように、酒の熟成は平均半年くらいにしています。
次は濾過装置、この機械は袋状の濾布を両側鉄板で吊るすように取り付け、中にさらにゴム盤のついた鉄板を入れます。蛇腹全体を油圧で圧搾しながらゴム部分に空気を入れてさらに圧搾を掛けるのです。
そして、ウィスキーの富士北麓醸造所。2020年から稼働しています。 醸造後、この写真のある蒸留器で2段蒸留します。1段目で25度、2段で60度まで蒸留を行いモルトを仕上げます。
大麦麦芽を酵素が出来、糖化もある程度進んだところで熱乾燥し生長を止め、糖と酵素を保持します。この状態で醸造するのです。これを原酒とし、たるで寝かせた後、グレーンとブレンドして商品化します。井出醸造店ではグレーンは米を使い、日本酒酒蔵ならではのウィスキーをの味わいを狙っています。あと5年くらい醸造して、皆様にお届けしたい、とのことです!
フルキヲタズネル
井出醸造店様の酒造りへのこだわりとして、温故知新をお聞きしましたが、井出醸造店様の海外市場へのアプローチコンセプトであるインバウンドを引き金にする部分では、特に「フルキヲタズネル」部分を強調されていました。
江戸時代に作られた家屋の座敷、頼朝の富士の巻狩りの屏風に見守られ、枯山水の庭を眺めながら、日本酒を楽しむ。
井出醸造店様の、きりりしたなかに香り高い、正統な味わいの日本酒を、こうした文化的な要素とあわせたなかで楽しんで頂く。ここがならでは、のところになると思います。日本酒は持ち帰れても、ものとしての庭や座敷は持ち出せません。
海外からのお客様には文化的な体験として持ち帰って頂き、できれば再び訪れて体験して頂く。その繰り返しのなかで井出醸造店のお酒を認知し、ファンになって頂くということになります。非常に地道な努力ですが、これは大手の酒造メーカーは決して真似のできない、井出醸造店様独自のやり方ということがよくわかりました。
富士山の
世界遺産登録は、
信仰の対象、
芸術の源泉としての文化遺産登録です。
井出醸造店様の酒蔵ツアーでも
日本の伝統文化を海外からのお客様に
体験して頂くことで
世界へ発信し、
その文化、
「伝統の結晶」
として、
日本酒も
楽しんで
頂いています。
その方向性は
共通していると
言えるかも知れませんね。
ではまた!
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